@宇宙から来た!?エルビス・プレスリー
1 ELVIS!
 ロックの歴史を語る時、本当は百年もさかのぼってアメリカ南部の黒人奴隷が日々の労働の苦しさを忘れる為「ブルース」とか「賛美歌(ゴスペル)」を発明した事から始めなければならないのだが、そこから書き出すとそれだけで一回分の枚数を使ってしまうので、その辺は割愛させて頂く。とりあえず基礎知識としては、ロックン・ロールは黒人が創ったとだけ知っていれば問題はないと思われる。なぜなら、これを否定する人間はまず居ないから・・・。

 さて、ロックン・ロールはそんな黒人奴隷達の発明したブルースや賛美歌を、チャック・ベリーリトル・リチャードと言った人たちが、色々工夫(速くしたり、叫んでみたり)し、新化させて誕生した<新しい娯楽>だったのだが、それが黒人だけでなく、少しずつ、そして着実に白人にも受け入れられるようになっていった。そして、そのうち白人の中でもギターを持って黒人の模倣をする若者が現れ出したのである。しかも中には黒人に負けず劣らず、優れた<ブルース・フィーリング>を備えた若者も居た。

 エルビス・プレスリーはそんな中、最初に登場した白人のロックン・ローラーだった。今をときめくヒップ・ホップ歌手のエミネムが、「自分はヒップ・ホップ界のエルビスだ」と、自嘲的に言ったのも、黒人の発明した音楽で白黒双方から人気を集めている自分がエルビスと似ていると思ったからだろう。確かに、ロックもリズム・アンド・ブルースもヒップ・ホップも全部黒人が創った。
 映画「天使にラブ・ソングを2」で、黒人の生徒が白人の同級生に、「お前らは何でも真似しやがる、少しは自分で何か創って見やがれ」とケンかを売るシーンがあったが、それは黒人はいつも「発明家」で、大衆的成功は「真似した」白人がかっさらってしまうと言う皮肉な構図に対する怒りもあるだろう。事実、その白人ヒップ・ホッパーのエミネムも(アメリカでは)社会現象的な成功を収めている。


 という訳で、エルビスとはそういう存在だったのだ。そしてその成功の要因は、ただ歌が上手いとか、顔がカッコいいとか、それだけではなかった。彼はロックを初めてエンターテイメント化したのだ。それ故、歴史に名が残っていると言っても過言ではない。「エンターテイメント」と言っても、キッスみたいにやるにはまだ早い。その男、エルビス・プレスリーは腰を振った。そして、セックス・アピールという、黒人のやらなかった技を、彼は発明し、型にまでしてしまったのだ。
 その余りにもあからさまな性の表現は、正に前代未聞、人々の目には「見てはいけない物」として映った。それゆえ、エルビスは「いかがわしい反教育的な見世物」として、迫害の対象となるのだが、同時に、エルビスの並外れたスター性と、暴力衝動や性衝動をも肯定するような、激しくもご機嫌な音楽は当時の若者の「欲求」を見事に昇華させる物だった為、熱狂的な人気を集めてしまった。
 このような事から、タブーを犯して何ぼというロックの反社会性が、又は「反教育的」「反道徳的」な表現が、エルビスによって確立されたという事が分かる。