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BRIT POP | 24. ブリットポップとは何か(後) |
![]() ストーンローゼズ1st ![]() ストーンローゼズ ![]() ブラー「パークライフ」 ![]() オアシス「ディフィニティリー・メイビー」 ![]() オアシス2nd 「モーニング・グローリー」 ![]() ブラー ベスト ![]() ブリットポップ御三家の一角 パルプ |
ストーン・ローゼズは、そんな「脱落者・イギリス」の空気を最初に体現したバンドである。のちに「ブリットポップの祖」と言われることになるが、彼らの曲の最大の特徴は、その「無色透明」さだ。叫ばず、きばらず、少し気だるげなボーカル、ノイジーだがやたらと透明感のあるギター、純情たっぷりな詩世界。89年に発表された彼らのファーストアルバム「THE
STONE ROSES」は初登場47位(UKチャート)、シングルは10位以内に入る健闘を見せた。 背伸びをせず、等身大の自分をさらけ出すというローゼズの方法論が時代にマッチしていたということである。 そのストーンローゼズに衝撃を受けて後に続いたのが「ブリットポップの立て役者」となるブラーとオアシスである。 ブラーはローゼズに影響を受けてはいるものの、ローゼズほどかったるくもないし感傷的でもない。見かけはなよっちいが、音楽的には軽快なポップソングが多く、ファンクっぽいものからダンス・ミュージックまで幅広い音楽性を備えている。非常に器用なバンドだ。 それがよく分かる作品が94年に発表された3rdアルバム「パークライフ」だ。ストーンローゼズの「自然体」に、モンティパイソン風のブラックユーモア、ビートルズ、ザ・ジャム、モット・ザ・フープルといった古き良き英国ロックからの影響、そして三人称で歌われる時にシニカルで、時に短編小説のような歌詞は、「イギリスらしい音楽」を求めていた若者たちを狂喜させ、大ヒットした。 ![]() 一方オアシスはというと、ブラーの「パークライフ」を追いかけるように94年8月「ディフィニティリー・メイビー」でデビュー。これがいきなり全英チャート1位を記録し、グランジ主流のロックシーンに大きな風穴が開いた。 オアシスの音楽性は冒頭でも述べたとおりである。曲にメリハリがなく、非常に平面的(フラット)で、どことなく雑然としている。そして味の抜けたビールのようにダルい。知的で、都会的に洗練されたブラーとは対照的である。(事実、ブラーはロンドンの中産階級出身、オアシスは地方の労働者階級出身) そのせいかこのバンドは早くからライバル扱いされ、翌年の95年、ブラーのシングル「カントリーハウス」とオアシスの「ロール・ウィズ・イット」が同日発売されるという珍事件が発生すると、マスコミはこぞって「どっちが売れるか」とこのライバル対決を煽り立て、国営放送のBBCまでニュースで流すという異例の事態に発展した。 そこまでの騒動になると、自然、彼らのファッションにも注目が集まる。ジャージやレインコートといった、あまりに「日常的」すぎてこれまでどのロックスターも着用していなかったアイテムを何食わぬ顔で着ているのを見て、若者たちが真似をするのにそう時間は掛からなかった。日本でも「U.Kファッション」だとか「U.Kなんたら」といった言葉が急に男性誌の表紙に踊るようになり、巷に偽リアムや偽デーモンがぽつぽつ登場し始める。 PVだろうとライブだろうとジャージ姿のまま演奏する彼らの姿は、そのまま当時のイギリスの若者の姿だった。スーパーやコンビニに行くときの格好でロックをやってしまう彼らを若者たちは「クール」と感じたのである。
しかしそれらはあくまで「衣装」であり、自分を時には美しく、時には不良に、時にはより男らしく見せたりするための道具だった。いわば自分を「高めるため」のものだった。 ところがブリットポップのジャージはそうではない。自分を高めるために着ているのではない。ただ着ているだけである。つまり、「頑張らない」「背伸びしない」「いつもの俺」といった自然体であることを是とする意識が生んだファッションと言える。 そしてその「背伸びしない」ということが、国際競争から一歩身を引いた90年代初頭のイギリスの選択した「新しい生き方」だった、といったら言い過ぎだろうか。 イギリスのブリットポップ・ムーブメントとほぼ時を同じくして、日本でも「J-POP」なる言葉が生み出され、洋楽マーケットは「小室ファミリー」等を初めとする邦楽勢に押され始める。アメリカはグランジから抜け出せずに暗中模索状態にあり、もはや「世界中で同じ音楽が流行する」という時代が過去の物になりつつあった。 細分化・多様化の時代の始まりである。 続きを読む「第25話 多様化・細分化の時代~総括90年代〜」 |
目次 | ||||||||
1.エルビス | 6.ウッドストック | 11.プログレ | 16.ニューウェーヴ | 21.グランジ | ||||
2.ビートルズ登場 | 7.グラムロック | 12.NYパンク | 17.ガールズポップ | 22.カートコバーンの死 | ||||
3.ボブ・ディラン |
8.三大ギタリスト | 13.セックスピストルズ | 18.ヘヴィメタル | 23.ブリットポップ(前) | ||||
4.狂宴の60年代 | 9.パープルとツェッペリン | 14.サントラ映画 | 19.LA.メタル | 24.ブリットポップ(後) | ||||
5.ロックと芸術 | 10.70年代ロックシーン | 15.産業ロック | 20.ガンズとメタリカ | 25. 多様化・細分化 |