18. ヘヴィメタ黄金時代  HEAVY METAL

80年代のロック史を語るのなL.Aメタルを代表とする「へヴィー・メタル・ブーム」は避けては通れない。本でもビデオでも良いが、「ロックの歴史」と銘打ったもので、真面目にヘヴィ・メタルを論じているものは極端に少ない。ヘヴィ・メタルの歴史を真摯に解説してくれるのは日本では音楽雑誌の「BURRN!」ぐらいである。

90年代以降台頭してくる事になるグランジ系ロックバンド(後々詳しく説明します)の中には、オジー・オズボーンのことを「グランジの祖」としてリスペクトしたバンドも多く存在したが、それも所詮は70年代までのブラック・サバス時代のオジーのことを言っているに過ぎない。
 オジ自身も「みんなサバスの話しばかりしてくるが、俺はソロになってからの方が長いし、レコードもサバスの時とは比べもんにならないほど売れてる!」と、半ば怒りながら言っているように、このオジーに対する不当な評価と同じく、ヘヴィ・メタル・ブームもロックの歴史においては亡き物とされることが多い。

したがって、ここでは少し80年代のHM/HRについて触れたいと思う。

70年代末期、パンクの誕生がその後に及ぼした影響がいかに巨大だったとはいえ、それは当初は小さなブームの一つでしかなかった。
 そんなパンク・ムーブメントを尻目に78年ヴァン・ヘイレンがアルバム「炎の導火線」でデビューする。デイヴィッド・リー・ロスの強烈なセックス・アピールと、エディー・ヴァン・ヘイレンの超絶ギターにより、エアロ・スミスやキッスが次々とメンバー・チェンジなどのトラブルで下火になっていたアメリカン・ハードロックの新たな担い手となった。

エディーの「ライト・ハンド奏法」(注:本来ギターはピックで弦をはじく様にして弾くのだが、エディーはピックではなく指で、弦を押さえつけるようにしてギターを弾いた。だから「ライト(右の)ハンド(手)」奏法)・・・を駆使したギター・プレイは多くのギターキッズを熱狂させ、これによってエディーは新世代のギター・ヒーローとなった。後続のへヴィ・メタル・バンドのギターリスト達はこぞってこの「ライトハンド奏法」を習得し、ギターソロに取り入れた。

速弾きといえば忘れてはならないのが元祖「超絶ギタリスト」のリッチー・ブラックモアだが、彼はディープ・パープルを脱退して75年に、(LAにある酒場から名前をもらった)レインボーを結成し活躍を続けていた。
 そのディープ・パープルからもう一つ、ビッグバンドが派生している。パープルを脱退した3代目ヴォーカリスト、デヴィット・カバデールがソロとして始めたホワイトスネイクだ。
 ホワイトスネイクは78年に始動し、「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」「フール・フォー・ユア・ラヴィン」などロック史に輝く名曲を生んだのだが、このバンドのすごい点はこれらの曲を数年後により洗練された形でセルフリメイクし再ヒットさせるという離れ業に成功したところだ。たった数年前の曲でも「今風に」と作り直したくなるほど、シーンやサウンドの変化が目覚しかったことの表れといえよう。

さて、そんな大物たちを追い越せ追い抜けと、イギリスから続々とフレッシュなバンドが登場する。モーターヘッドサクソンジュダス・プリーストアイアン・メイデンなどだ。彼らはパンクのスピード感と反骨精神に洗礼を受けつつも、ツェッペリンやパープルのような伝統的なハードロックにも心酔していた。
 パンクバンドのように破れたTシャツにジーンズ、鋲の付いたジャケットを着てハイウェイスターのような楽曲をプレイする彼らを、ある雑誌記者がこう書いた。

「イギリス・ヘヴィメタルの新しい波だ」と。

この、「ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィーメタル」(NWOBHM)と呼ばれる新しい潮流は、メタリカ、スレイヤー、さらにはオフスプリング、SUM41にまでいたる「スラッシュメタル」「メロコア」「エモ」という「支流」を作ることになる。
 音楽性は全く違うが、同じイギリス出身の同期生ということでデフ・レパードもこの「NWOBHM組」に数えられている。

そしてブラック・サバスを脱退したオジ・オズボーンは、アメリカのLA(ロサンゼルス)で、元クワイエット・ライオットのギタリストだった、ランディー・ローズと出会い、彼をリード・ギタリストとして迎えたアルバム「ブリザード・オブ・オズ」(80年)でソロ・キャリアをスタートさせた。(オジはこのランディー・ローズを初めとして、ジェイク・E・リーやザック・ワイルドといった当時無名だった、後の名ギターリストたちを次々と発掘した)

このような状況に加えて、オーストラリアからはAC/DC、ドイツからは70年代から活躍を続けているスコーピオンズアクセプト、そのスコーピオンズにも参加していたギタリスト、マイケル・シェンカーのマイケル・シェンカー・グループなどなど、パンクなんかドコ吹く風といったぐあいに、世界のあちこちでへヴィー・メタルの炎が燃え上がっていった。

そして、そんな状況下でいよいよアメリカからLAメタル最強のバンド、モトリー・クルーが誕生することになる。

第19話「L.Aメタル」 続きを読む⇒


「炎の導火線」



デイヴィッド・リー・ロス



ライトハンド奏法をする
エディ・ヴァンヘイレン



Dパープル脱退後
ホワイトスネイクを
結成したD・カヴァデール


アイアンメイデン1st


アイアンメイデン
Tシャツにデニムが特徴



ジューダスプリースト
こちらはレザーに鋲。



ランディ・ローズ
飛行機事故により
25歳という若さで
世を去った。


    




産廃 許可 行政書士