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SEX PISTOLS | 13. セックス・ピストルズという名の爆弾 |
「ピンクフロイドが嫌いだ」 と書かれたTシャツを着る ポール・クック(Dr) マルコムとヴィヴィアンが 開いた「SEX」 ヴィヴィアン・ウエストウッド ジョン・ライドン (ジョニー・ロットン) 最初で最後のアルバム 「勝手にしやがれ」 シドは元々ピストルズの ファンであり、J・ロットン の学友でもあった。 ドラッグの過剰摂取により 22歳の若さで逝去。 |
ニューヨークで発火したパンク・ムーヴメントは、ラモーンズ等を筆頭としたバンドのイギリス遠征によって瞬く間にイギリスにも飛び火した。その頃のイギリスは深刻な経済不安に陥っており、景気も低迷。特にロンドンの街には職にあぶれて行き場をなくした若者達が溢れかえっていた。 そんなイギリスの若者達の怒りとフラストレーションを満たすのに、もはや難解で長ったらしい「プログレッシヴ・ロック」は無用の長物でしかなかった。経済的・社会的不安・不満が高まるにつれて「プログレ」は、一気に若者達の間で嫌悪の対象となって行った。 不条理で苛立たしい世の中への怒りをストレートに代弁する人間が必要とされていたのである。 ピストルズの生みの親、マルコム・マクラーレン(デザイナー兼ブティック店オーナー)はそんな若者の欲求をいち早く察知し、パートナーでデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドと共に「SEX」という名のブティックを開業。その店で「ピンク・フロイドが嫌いだ」と書かれたTシャツや、敗れてボロボロになった服などを売リ始めた。そして店には、Tシャツに書かれたメッセージに共鳴した若者達が押し寄せ、あっという間にそこは行き場の無い若者達のたまり場と化したのである。 そしてギターのスティーブン・ジョーンズ、ドラムのポール・クック、ベースのグレン・マトロック(後に脱退し後任にシド・ヴィシャスが加入)、そしてヴォーカルのジョニー・ロットンというライン・ナップが揃った。だが、全員音楽的経験は全く無いという、純100パーセントの「素人バンド」だった。 こうして作られたセックス・ピストルズは、マルコムのイメージを具現化する道具として調教された。マルコムは「客に唾を吐きかけろ!」「ドールズの様になれ」「大衆に憎まれる存在になれ!」と、ザ・フー、ニューヨークドールズやアリス・クーパー、ストゥージズなど、歴代の反社会ロッカー達の楽曲を習わせ、メンバー達を仕込んでいった。 そんな過激なイメージと振る舞いが功を奏したのか、彼等の名前は一気に広がり、シングル「アナーキー・イン・ザ・UK」を発表するに至る。 『ゴッド・セイヴス・ザ・クイーン』 まさに、今まで誰も歌わなかった(歌えなかった)過激で攻撃的なこの歌は、放送禁止になりながらも見事に若者達の欲求を晴らし、支持され、ヒットした。 ヴェトナム戦争の傷跡からまだ立ち直りきれていなかったアメリカとは対照的に、イギリスの若者達にはエネルギーが溢れていた。ピストルズの成功を目の当たりにした若者達は「自分にも出来る」と次々バンドを結成し、ロックによって社会への怒りやあらゆる欲求を吐き出し始めたのだった。 |