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12. ロックがロックに噛み付いた日  PUNK!
 パンク・ロックとは一体何なのだろうか。現在では「パンク」という音楽は、単純に音楽の一ジャンルとして捉えるのが一番分かりやすいが、70年代後半のパンク誕生当時はちょっと違った。
 70年代にロックはどんどん巨大化し、コンサートの規模も、技術も、質も、これ以上ないという域に達していた。もはや常人ではとても真似できないような神業を持つギタリスト、最先端の技術を駆使した実験的な音楽となにやら小難しい歌詞を唄うプログレ・バンド、厚底ブーツにカツラをかぶった性別不明のグラム・バンド・・・・。
 これらのどのジャンルにも馴染めない若者達が勢いに任せて鳴らしたのがパンク・ロックであった。
 そのノイジーでテンポのやたら速い、粗末な演奏と攻撃的な歌詞はロックン・ロールが本来持っていた野蛮性と未熟性を甦らせた。
 70年代後半に登場した、現在ではリアル・パンクと呼ばれる世代で代表的なバンドといえば、アメリカ・ニューヨークのラモ―ンズとイギリス・ロンドンのセックス・ピストルズである。
 こうも極端に二つのバンドをあげると、一部からパンクといえばクラッシュだとか、いやダムドだ、パティ・スミス、MC5、ジョニ―・サンダース!・・・などと声が飛んできそうだが、パンクという物を知らない人、または現在パンクと呼ばれている物のルーツを知りたい人はまずこの二大バンドを抑えておくべきだろう。
 
 ラモ―ンズは74年に結成し、その活動の拠点をニューヨークのライブ・ハウス、CBGBとしていた。この「CBGB」というライブ・ハウスは今ではパンク発祥の地としてパンク・ファンの間では聖地的な存在となっている。
 というのもこのライブ・ハウスに当時出演していたのはラモ―ンズの他にも、パティ・スミステレヴィジョンブロンディー、トーキングヘッズ、といった、今でも多くのロック・ファン達にニューヨーク・パンクとして愛されている面々だったからである。
 ところで、今でこそパンクといえば「一本調子でやかましい音楽」「ツンツン頭に破れたシャツ」というイメージが定着しているが、それを作り出したのは次回に紹介するセックス・ピストルズであって、当時このCBGBのステージに上がっていたミュージシャン達でそんな恰好をしていたバンドはいなかった。ラモーンズ以外は服装もポロシャツだったりセーターだったり、どちらかというと草食系というか、おりこうさんな服装で、音楽性も多種多様であった。だからルックス的にも音楽的にも「パンク」と言われてもピンと来ないのがこの黎明期のNYパンクバンドたちの特徴である。
 彼らはただ単に、自由に、伸び伸びと、メインストリームでは門前払いされてしまうような「自分たちの聞きたい音楽!」を無名ながらかき鳴らしていただけだった。
 そんな数々のバンドに混ざりながらラモ―ンズが鳴らしたのが、自分たちが好み、そして信じた<シンプルでストレートなロックン・ロール>だった。
 使うコードはせいぜい3つか4つ。熱唱もドラマチックな展開もなく、飛んだり跳ねたりもしない。ただ、高速のビートに乗せながら「あのガキをバットでぶん殴ってやれ」「俺はキミのボーイフレンドになりたい」といった、ごくごく単純なメッセージを呟きつづけた・・・。
 それは単純であるがゆえに美しく、純真で、ロックが忘れていた大切な何かを思い出させるものだった。
ラモ―ンズがやったパンクとは、ロックがロックに反抗した前代未聞の出来事だったのである。

 ラモ―ンズは76年の「ラモ―ンズの激情」から95年の引退宣言まで、同世代のバンドがアッというまに解散していく中、ひたすら自分たちの信じたロックン・ロールを鳴らし続けたのだが、2001年にはヴォーカルのジョーイが、2002年にはオリジナル・メンバーでベーシストのディーディーが他界し、その歴史に幕を閉じた。
  
 そんな、ラモ―ンズのレコード・デビューの同年、76年にイギリスで一枚のシングルが発売される。
「アナーキー・イン・ザ・UK」、セックス・ピストルズのレコード・デビューである。

続きを読む「第13話 セックスピストルズという名の爆弾」

 


パンクの草分け
ニューヨーク・ドールズ





ラモーンズのファースト
「ラモーンズの激情」




パティ・スミス



テレビジョン
「マーキームーン」





CBGB出身バンドの中で
最も商業的に成功した
ブロンディー




トーキングヘッズ
この時代から、バンドメンバーに
女性がいることが
珍しくなくなってきた。



    


目次 
1.エルビス    6.ウッドストック   11.プログレ   16.ニューウェーヴ   21.グランジ
2.ビートルズ登場   7.グラムロック   12.NYパンク   17.ガールズポップ   22.カートコバーンの死
3.ボブ・ディラン
  8.三大ギタリスト   13.セックスピストルズ    18.ヘヴィメタル   23.ブリットポップ(前) 
4.狂宴の60年代   9.パープルとツェッペリン   14.サントラ映画   19.LA.メタル   24.ブリットポップ(後)
5.ロックと芸術    10.70年代ロックシーン   15.産業ロック   20.ガンズとメタリカ   25. 多様化・細分化


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